コンプライアンス・アドバイザーの休日

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zoom RSS 日常性に隠されたリスク

<<   作成日時 : 2012/05/08 11:16   >>

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コンプライアンス・アドバイザー  岡本展幸(おかもと ひろゆき)

 今年(2012年)もいつものようにゴールデン・ウィークが来て、日本中の多くの人が国内旅行、海外旅行へと一斉に繰り出した。残念ながら不幸な事故も何件か発生し、何人かの人々の尊い命が失われた。テレビや新聞などのマスコミの取り上げ方もいつも通りだ。

そして、ゴールデン・ウィークが終わると、再び、我々はそれぞれの日常性へともどり、それぞれの日常性に組み込まれ、毎日の生活をはじめる。決して悪いことではない。それが、善良な人間としての普通の人生の送り方の一面であることは間違いない。平穏な日々へともどり、愛する者と自らのために働き、力強く生きていく。私もそんな人生を送る一人に過ぎない。

 でもそんな日常性の中で、ふと思いがけないリスクを見出してしまい、身震いすることがあるものだ。私の場合は、ある新聞の社説を何気なく読んでいる時にそんなリスクを知覚してしまった。日付はこのゴールデン・ウィーク中の5月3日(木)だ。そう「憲法記念日」のことである。

 日本国憲法が施行されてから65年たつものの、改憲にむけた本格的な審議がまだ、国会で始められてはいない、という解説からその社説は始められ、改憲手続きを定めた国民投票法は2010年5月に施行されたものの、まだ、実質審議には至らず、国民投票法の付則として追加された3つの課題がこなされていないと続く。そして、長年そのままそのまま放置している政治の怠慢を批判している。つぎに、昨今の自民党の改憲草案や民主党の憲法調査会長の話に触れて、改憲審議の中心的な論点に入る。

 ここまでの内容で、当社説の8割くらいの紙面が割かれている。なるほど、と思いながら読み進める。最後の段になると、1946年の憲法制定当時の状況を、国民が苦難の条件の下で憲法制定に心血をそそいで考慮を尽し、血みどろの苦心をしたからこそ、現在の日本国憲法があるとする論調で締めくくられている。

 これは何か変だと感じた。「国民が憲法制定に心血をそそいで考慮し、血みどろの苦心をした」?しばらく思考が停止した。私は当時の国民ではないものの、現在は国民の一人なので、うっかりすると、何か褒めはやされている錯覚に陥ってしまい、自己満足で終わってしまいそうになる自分を押さえながら、冷静な思考を試みた。

 史実に沿って考えてみれば分かることだ。1946年の憲法制定当時の国民は、敗戦(1945年8月15日)後間もない混沌とした社会状況のなか、瓦礫の中から立ち上がろうと必死で、今日をいかに生きるかということが第一優先で、憲法のことなど考慮できる状況ではなかったはずだ。いや、それ以上に当時の日本の状況は、マッカーサー元帥率いる連合国総司令部(GHQ)の実質的占領下にあり、日本国憲法の制定に際しては、当時の日本政府案さえほとんど受け入れられずに当総司令部に却下されたのである。

 結果的に、日本国憲法の原案が連合国総司令部の職員により1週間ほどで作成されたことは周知の事実になっている。さらに付言すれば、そのような経緯で策定された日本国憲法は、制定後、60年以上経ても一度の改正もされていないのにもかかわらず、他の先進民主主義諸国では憲法の内容にたえず注意をはらい、現実との乖離が生じれば絶えず憲法改正を実施するか、現実の方を修正しているのが実情だ。アメリカ(1787年制定)では27か条が追補、ドイツ(1949年制定)では46回改正、フランス(1958年制定)では11回改正など(注:1999年2月現在)。

 ついでに言えば、日本の政治家が良く口にする「日本国憲法は、世界で唯一の平和主義憲法である」と主張することも、正確な捉え方ではないようだ。
西 修『日本国憲法を考える』によれば、平和主義条項を憲法の中にいれている国家は、イタリア、ハンガリー、フィリピンをはじめ、じつに百二十四か国におよぶ(1999年2月現在)。

 日本国憲法にまつわる説明が長くなってしまったが、史実等の詳細は下記の参考文献を参照して欲しい。もっとも、当社説が何故このような史実に反するような、或いは、少なくとも史実を誤解させるような記述をしているのかをここで究明することを目的として私は筆を進めてきたわけではない。

 ここで言いたかったことは、何気ない日常性の中にも、我々の正常な思考機能を麻痺させ、衰退させてしまうようなリスクが隠されている、ということだ。そんな日常性の中で生きているという現実を我々は忘れてはならないということを自戒も込めて身近な例を挙げ述べてみただけである。(了)

(参考文献)
佐伯啓思『日本という「価値」』
高坂正堯『思考停止をやめ明白な解答を』
雨宮昭一『占領と改革』
西 修『日本国憲法を考える』
高橋和之編『世界憲法集』
江藤淳『国家とはなにか』
渡辺洋三『法とは何か』
中川剛『日本人の法感覚』




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