コンプライアンス・アドバイザーの休日

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zoom RSS ボナ植木著『魔術師たちと蠱惑のテーブル』を読んで

<<   作成日時 : 2012/07/01 12:45   >>

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 コンプライアンス・アドバイザー  岡本展幸

 人の心は何によって癒されるのだろうか?それには音楽があり、エンターテインメントがあり、そして小説がある。著者は言わずと知れた高名なマジシャンであり、最近は、ジャズとマジックのコラボライブ「ジャマライブ」も手掛け、ジャズバンドのボーカリストもこなす。

 そして、今回、小説の出版を果たした。これで、人の心を癒す三分野をすべて制覇したことになる。つまり、マジック、ジャズ、小説である。今回、出版された小説は、13の物語から構成され、最終的に全体で一つの小説として成立するユニークな構成を採用している。各物語はそれぞれが独立したストーリーで完結しているので、別々に順不同で読んでも十分、楽しめる内容だ。

 しかし、読者は各物語を読み進んでいくうちに、各物語の根底には、著者の拘りと感性に裏付けられたジャズのメロディーが流れ、マジック・ファンタジーが通底しているのが著者の織りなす言葉群から感得されるはずだ。各物語の冒頭にエピグラフのように付けられた「推奨BGM」、そして、時折、顔を出す大物マジシャンのランス・バーリントン。そして、何よりも著者に一番影響を与えているのは、この本の最初にも記載されている故星新一であることが本を読み終えた後に感じとれる。

 つまり、この小説は、ショート・ショートなのである。ショート・ショートとは、400字詰め原稿用紙にして10数枚程度の短い小説形式のことで、著者が敬愛する、日本SF文学の旗手と呼ばれた故星新一が得意とするものであった。

 この小説は、故星新一の「ショート・ショート」を踏襲し、そのわずか原稿用紙にして10枚ほどの文章の中に、一つのストーリーを作りあげ、それを13編にまとめ、一つの小説にしているのである。内容的には著者独自の世界がそれぞれの物語の中に出現し、読者はジャズのメロディーに耳を傾け、マジックのファンタジーに惑わされ、そして各物語の最後には決まって期待を裏切られる結末が待ちうけており、読者は自分の期待とは裏腹に打ちのめされたり、ほっとしたり、時には涙ぐんだりするのである。

 「何故、マジシャンが小説を?」と思う者がいるかも知れない。しかし、その謎はこの本を読めば複雑に絡み合った何本かの糸が一瞬にして解けるように解明する。

 「ショート・ショート」が普通の小説のように長くはないように、マジックも映画やコンサートなど他のエンターテインメントのように長時間に及ぶものではない。「ショート・ショート」もマジックも、短時間の勝負である。その短い時間、狭い空間の中で、いかに読者や観客を惹きつけ、ハラハラさせ、感動させ、気持ちや期待感を最高潮まで持っていき、最後になって、今度はジェットコースターが最高度の地点からいきなり落下して下っていくように、一気に読者や観客の期待とは正反対の結末へ如何にとうまく持っていけるかに、実は「ショート・ショート」もマジックも勝負はかかっているのである。正に一発勝負の名人芸である。

 そう考えてみると、マジック界の第一人者であるボナ植木氏が優れた「ショート・ショート」を書いても何の不思議もないことに思いあたる。

 著者は今年、還暦を迎えた。その今までの長き人生の中でマジックを通じ「ショート・ショート」の技法に磨きをかけ、「ショート・ショート」を通じマジックの腕を上げてきたのに違いない。

 この小説は、「ショート・ショート」を誰よりも愛し、日本最高峰のマジシャンとして生きてきた著者でなければ書けない小説である。この小説が既存の型にはまり切れずに、どの小説ジャンルにも分類し難いのは、著者の創造的感性の領域が既成の小説概念を越えているからである。言い方を変えれば、著者の感性を凌駕する「ショート・ショート」の書き手が今まで存在しなかったと言っても良いだろう。

 マジックを愛し、ジャズを愛する人、そして何よりボナ植木を愛する人たちに是非、薦めたい小説である。(終)


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