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zoom RSS 米MRIインターナショナル顧客資金消失事件からの教訓 〜投資判断にコンプライアンス・チェックを〜

<<   作成日時 : 2013/06/20 12:04   >>

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コンプライアンス・アドバイザリー・パートナー  岡本展幸

1.事件の背景
業者の概要
 投資ファンドに関連した業者の不祥事が、AIJ年金消失事件に続き大きな社会問題になっている。米国「MRIインターナショナル(MRI INTERNATIONAL, INC.)」という、米国内の診療報酬債権を基にした金融商品を日本で販売していた業者である。

 証券取引等監視委員会及び関東財務局が平成25年4月26日付で公表している資料によれば、MRIインターナショナルは、アメリカ合衆国ネヴァダ州ラスベガス市に本店があり、東京の千代田区永田町に日本支店を置いていた。また、役職員数は、本店320名、日本支店27名(平成24年12月末現在)とされている。

 金融商品の特徴                  
 また、上記公表資料によれば、MRIインターナショナルは、業務として、米国の医療機関の診療報酬請求権(Medical Account Receivables)を運用対象とするファンドを米国(ネヴァダ州)で組成し、同請求権の購入及び回収事業から生じる利益の一部を配当することを内容とする権利(ファンド持分)を日本の投資家に販売勧誘していた、とされる。

 同社が日本で行っていたファンド事業は、平成10年から開始していたようだが、平成19年9月に施行された金融商品取引法(以下、「金商法」)上、同ファンド事業が、「第二種金融商品取引業」(金商法第28条第2項)に該当することになったことから、平成20年6月付けで、関東財務局に金融商品取引業者(以下、「金商業者」)として登録していた。

 同社は金商法上、「第二種金融商品取引業」のみ登録しており、上記公表資料などから判断すると、日本で販売勧誘していたファンド持分は、「集団投資スキーム持分」(金商法第2条第2項第5号・第6号)に該当すると思われる。

 そして、「集団投資スキーム持分」の販売勧誘は「第二種金融商品取引業」に該当することになるので、同社の登録業務とも合致する。

 投資家の心理
 同社が集金した資金の総額は1800億円と言われており、その多くの使途が不明な上、あるべき口座にさえ資金が保管されていないという。さらに今回の事件をより深刻化させているのは、対象となっている多くの投資家が、いわゆるプロの投資家ではなく、個人投資家ということだ。

 当投資ファンドの契約形態も、途中解約ができない「クローズド・エンド型」ということも、投資家が不信をいだき途中解約したくとも、そのようにできなかった一因となっているようだ。

 また、同社が投資家に勧誘する際に提示していた広告宣伝文やホームページの掲載文には、自社に都合の良い内容だけが記載され、そして、事実に反するような内容(高い配当率6%〜8%など)も記載されていたようだ。

 今回、不幸にも被害に遭われた個人投資家の方々には、同社営業担当者から耳慣れない金融用語やスキーム図を見たり説明されたりしても、それらの内容の真偽を判断するのは困難であったと推察される。

 ましてや、少しでも自己資金を有利な高い利回りで運用したいという心理が強く働いてしまっていると、物事を都合の良い方向へと考えがちになり、業者の言いなりに陥りやすい。その結果、業者からの提示資料や説明内容を冷静に分析し、判断することは困難な状況になってしまう。懐疑の念が全く浮かばない状態だ。

 仮にそのような意思が多少、投資家に働き、常識ではあり得ない「高利回り」には疑いを持つことはあるだろうが、通常、個人投資家が、今回のようなファンド・スキームを業者から見せられても、その内容の是非を判断するのは困難である。

 ファンド・スキームの透明性や適切な構成内容といった金融のテクニカルな観点から同社の説明資料を金融のプロが判読すれば、今回の金融商品は不透明でリスクの高い商品であることが判断できただろう。しかし、それを一般の個人投資家に期待するのは少し酷というものだ。

 金融のプロではない一般的な個人投資家は、上記のような複雑な金融商品を正確に理解することは困難かも知れない。しかし、悪質な金商業者を見抜く術はあるはずである。

 コンプライアンスの「尺度」を利用して、業者の信頼度を確認してみるのである。これなら複雑な金融商品の内容や金利・為替動向などといったテーマに詳しくなくとも、基本的なコンプライアンスの知識があれば、どんな金商業者に対してもある程度は対処できる。


2.金商業者に対するコンプライアンス・チェック 
 コンプライアンスとは、通常、社内から自社の業務内容や業務取引に対する不正や誤りを正したり、それらが法令等に抵触しないように事前に必要な社内規則を作成するなどして、社内のリスク管理体制を構築することである。さらに、必要な法令や社内規則等を役職員が率先して守るような企業文化を醸成することを目的とするものである。

 筆者は外資系金融機関(銀行、証券会社、投資顧問会社)で10余年コンプライアンス・オフィサーを務めた経験から、企業に対する内部管理機能の観点からだけではなく、企業の外側にいる投資家の立場からも投資対象先の企業や金融商品を扱う金商業者の信頼度を判断するためには、対象先のコンプライアンス・チェックが有効な手段になり得ると考えている。

 しかし、ここで念のためにお断りしておく。対象先の金商業者に対してコンプライアンス・チェックを行って、問題ないと投資家が判断したからと言って、決して投資の安全性を確証するものではない。本稿の目的は、あくまでも、悪徳業者を見抜く一つの対策として、金商業者に対するコンプライアンス・チェックを提案することなので、ご了承願いたい。

 【コンプライアンスの基本的なチェック項目
 金商業者に対するコンプライアンスをチェックするにあたり、基本的なチェック項目は、次の通りである。

@金商業者は金商法に基づく登録をしているか?

A登録している「業種」は何か?
 因みに金商法上の登録業務としては、第1種金融商品取引業(金商法第28条第1項)、第二種金融商品取引業(同第28条第2項)、投資助言・代理業(同第28条第3項)、投資運用業(同第28条第4項)と4種類がある。

B登録企業名や登録番号に基づき、金融庁、関東財務局のホームページで登録業種を確認する。
C会社のトップ(社長、CEO)は、どんな人物か?過去の職歴は?
D他の役員の過去の職歴等を同様に確認する。
Eコンプライアンス担当責任者の職歴等を調べる。


 悪質な業者の中には、登録をしないで金融商品取引業を行っている者もいるので、ここまでは、初歩的なチェックだ。

 対象金商業者が登録されていることが確認できたからと言って、ここで安心してはいけない。今回、事件を起こしたMRIインターナショナルは、実際、平成20年6月4日付で「第二種金融商品取引業者」として正式に登録されていたのである。

 【重要な事実 
 ここで気を付けなければいけない重要な「事実」がある。関東財務局や金融庁に登録されているからといって、当局は登録金商業者に対しては、不正をしない立派な業者です、といったお墨付きを与えているわけではない、と言う「事実」である。

 MRIインターナショナルが、ファンド持分を投資家宛てに販売勧誘する時に、「当社は関東財務局に登録している会社なので大丈夫です。」といった説明をしていたか否かは、筆者の知る限り定かではない。しかし、このような説明は悪質な業者がよく使う、不正な常套句であるので十分に注意をする必要がある。

 さて次にチェックすべき点は、金商業者のコンプライアンス体制/態勢である。つまり、会社組織の健全性、透明性などだ。

 上記のC〜Eの事項に関しては、通常、金商業者のホームページに公開されている。開示されていな場合は、金商業者に資料提示を求めても良いだろうし、インターネットで検索しても調べられる場合が多い。

 また、金商業者は、事業年度ごとに説明書類(事業報告書)を作成し、毎事業年度経過後4か月以内に公衆縦覧に供さなければならない(金商法第47条の2、同第47条の3)とされている。つまり、業を行う営業所窓口に説明書類(事業報告書)を備え置き、顧客等の閲覧要請に対応できるようにすることが金商法上、定められているので、それを参照することが可能である。

 しかし問題をより複雑にするのは、「事業報告書」の内容を改ざんして、虚偽の記載をしている場合である。新聞報道等によれば、今回、MRIインターナショナルは、業績等を不正に書き換えていたわけであるので、理論上、学歴詐称、職歴詐称もあり得るわけだ。

 業績等を不正に改ざんしたり、役員の職歴等を詐称するのは、かなり悪質であるが、記載内容をまた、別の信頼のおけるデーターソースから二重チェックすることも、場合によっては必要になる。

 とりわけ、コンプライアンス担当者(役員が兼任する場合もある。)の人物チェックは重要だ。金商業の登録要件の中でも重要な位置を占めているからだ。

 業者が「第二種金融商品取引業者」として登録申請する際には、「営業部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として知識及び経験を有する者が確保されていること」が審査項目の一つとしてあげられている(「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」証券取引等監視委員会)。

 過去の業務経験や知識の度合は、過去の職歴等でかなり判断できるので、コンプライアンス担当者の職歴等を見て、業務経験が不十分な場合は会社のコンプライアンスは危なっかしいし、怪しい業者ほど経験不足なコンプライアンス担当者を設置するものだ。その方が、経営陣の言うままになり、悪事を働きやすいからだ。

 また、コンプライアンス担当者をはじめ金商業者の役員が過去に勤務していた企業が素性の分からいような組織の場合には、その登録金融業者は、まず怪しいと考えて良いだろう。コンプライアンス担当者が役員と結託して、悪事を働く場合もあり得るので注意が必要だ。

3.投資判断にコンプライアンス・チェックを 
 通常、個人投資家が投資判断する時の注意点というと、金融商品に対する投資リスクにだけに目が向きがちだ。しかし、往々にして、大きな問題化する投資商品というものは、悪徳業者によって販売勧誘される。

 従って、複雑な金融商品を理解するのが困難な場合には、まず、勧誘してくる業者のコンプライアンスを上記のような項目からチェックしてみたらどうだろうか?

 個人投資家も上記のように、ある程度のコンプライアンス知識をもち、金商業者に対するコンプライアンス・チェックを行えば、悪徳金融業者に対して、自己防衛策することができる。決して万全策とはならないものの、相応に、投資に対するリスク判断にも役立つ筈である。

(注意)
・本稿に記載されている情報は一般的なものであり、特定の個人や組織において対応する  ことを前提にしているわけではありません。また、本稿は信頼できると考えられる情報に基  づいて作成されていますが、筆者はその正確性および完全性に関して責任を負うもので   はありません。

・不動産および金融商品等の選択、投資判断の最終決定、または本稿のご活用に際し     ましては、活用者ご自身で個別・具体的にご判断いただき、ご活用くださいますよう
 お願い致します。

・本稿の無断転載、無断複製等を禁じます。
                                                          
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