金融庁が求める新たなコンプライアンス~「基本方針」が示唆する経営者の意識改革~

                                                              2018年8月23日
                                            コンプライアンス・アドバイザー  岡本展幸
 
 金融庁は、新たな方針として「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(6月29日)、「コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の進め方と考え方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)案」(7月13日)を公表した。

 新聞・雑誌等のマスコミでは「検査マニュアルの廃止」というテーマに焦点が集まりやすいが、両基本方針において地表には表出しない太い地下茎のように通底しているのは、「経営者の意識改革」と日本の金融機関をはじめとした「日本企業の国際競争力に対する焦燥感」である。

 「検査マニュアルの廃止」に関しては、実務現場での戸惑い、混乱をよそに当局自身はそれほど重要視はしていない。もっとも検査・監督を「形式」から「実質」へと急いで舵を切ろうとする当局の「焦り」の現れととれないこともないが、実務現場でコンプライアンスを担当する役員やコンプライアンス・オフィサーほど、大きな意味を持ち合わせていない。

 もっとも、実務上、コンプライアンスを陣頭指揮するコンプライアンス部署にとっては、今回、公表された基本方針(案)の内容は大きな意味を持つ。「検査マニュアル」の歴史は、金融庁が金融監督庁の時代に「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」(1999年7月)の公表に始まる。それから20年近くの歳月が流れている。コンプライアンス・オフィサーの世代交代も始まっている。中には前職が作り上げた社内の「コンプライアンス・リスク管理態勢」をそのまま引き継ぎ、今日に至っているケースも多いはずだ。

 しかし今後は「既存のコンプライアンス・リスク管理態勢」では立ちいかなくなる。確かに当基本方針には「検査マニュアルの廃止は、別表の廃止も含め、これまでに定着した金融機関の実務を否定するものではない」とあるが、同時に「金融機関が現状の実務を出発点により良い実務に向けた創意工夫を進めやすくするためのものである」と明言されている。

 今後、コンプライアンス・オフィサーとしての日頃の研鑽とプロとしての力量が問われることは間違いあるまい。
しかし、それ以上に問われるのは「経営者の意識改革」であることを経営者は肝に銘じることである。(了)




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