ある日の風景

 久々に広尾に足を運ぶ。昔行ったことのある駅前のカフェは、昼前だったので、オープンしていない。仕方ないので道路沿いに元来た道を戻り、交差点で細い坂道を入ると、私の好きな「オープン・カフェ」が見えた。中のカウンターには、口のまわりに髭を生やした外人のウエイターの顔が見えた。
 この辺りは、日本であって日本ではない、東京であって東京ではない、良さがある。つまり、不思議な西欧的な空間なのだ。道行く人もどこか違った雰囲気がある。頭陀袋を下げて、薄汚れたジーンズをはいたホームレスさえ、どこかイケてる!年老いたカップルが通り沿いのテーブルでコーヒーを飲みながら、クロワッサンを食べている。男性が小粋に肩に掛けているライトブルーのニットや婦人の良質そうで華やかなワンピースにも、驕りや嫌味がない。こんな洒落た日本人カップルもいるのかと、羨望と驚きで暫し目が離せない。
 一台の白いベンツが目の前をゆっくり走る。中には還暦を超えたと見える初老の紳士が野球帽を小粋にかぶり、ハンドルを握っている。濃いめのサングラスも様になっている。
 金持ちの若者には何かきな臭ささが漂うが、人生の折り返し地点を超えた初老の金持ちには、余裕と静かな勝利感が漂う。(了)

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